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No.107
2011/09/20 (Tue) 23:59:37
今日がヒカルの誕生日だと思いだしてから、
(人様のサイトで思い出したのですが……苦笑)
川上さんが亡くなった時、ふっと胸に浮かんだ切ない感情を吐き出したくて、書きはじめた短編が書きかけだった事を思い出して、
急いで仕上げました。
荒削りな上、ヤマも落ちもありませんが、ご了承くださいませ。
ヒカルのお誕生日をお祝いします!
おめでとうございます!
(人様のサイトで思い出したのですが……苦笑)
川上さんが亡くなった時、ふっと胸に浮かんだ切ない感情を吐き出したくて、書きはじめた短編が書きかけだった事を思い出して、
急いで仕上げました。
荒削りな上、ヤマも落ちもありませんが、ご了承くださいませ。
ヒカルのお誕生日をお祝いします!
おめでとうございます!
「あかり!」
呼びかけられた声に振り向くと、地方出張の帰りだろうか、珍しくスーツ姿のヒカルが立っていた。
「ヒカル! 仕事帰り?」
嬉しくなって頬を緩めると、ヒカルは軽く笑って頷いた。
「ああ。あかりは? 学校終わったのか?」
あかりの全身をさっと見下ろし、首をかしげながら言った。
高校の制服を来ているにもかかわらず、今は昼の二時、下校には早過ぎる時間だ。疑問に思うのは当然だろう。
「うん。もう三年生だし、今日は進路指導だけで終了!」
三年間来た制服とも、もうすぐお別れだ。
長いようで短かった三年間。
少しの寂しさと、少しの期待感がある。
制服を脱いだなら、隣に歩く幼なじみに少しは追いつけるだろうか?
ヒカルは中学を卒業してから、あっという間に大人になってしまった気がする。当たり前にスーツを来て、大人の人たちの中で、対等に立っている。
そんなヒカルと比べて、制服を着ている自分が、いつまでも子供のような気がして、早く大人になりたいと思っていた。
「あーもうそんなになるのかー。中学を卒業したのなんて、ついこないだのような気がしてたのにな」
「ヒカル……お年寄り見たいよ?」
眉間にシワを寄せてそう言うと、ヒカルはちょっとむくれた表情になって、軽く小突く仕草をした。
「うるせー。社会人になるとな、一年なんてあっという間なんだよ」
ヒカルの手があかりの頭に触れる。
ポンポンと撫ぜて離れようとする手を、あかりはそっと捕まえた。
そのまま手を合わせると、ヒカルのほうからぎゅと握ってくる。
こんな風に自然と手をつなげる関係になったのは、最近の事だ。
ずっとずっと昔はいつだって手をつないで走りまわっていたのに、いつの間にかその手が離れ、気が付けばヒカルはどんどん先を進んでいた。
でもようやく、ようやくこの位置に帰ってくる事ができた。
それでもまだ、対等になれたとは思えない。学生の自分と社会人のヒカルの間には、超えられない一線があるような気がする。
ただの気後れに過ぎないのかもしれないけれど、今は少しでも早く、この幼なじみに追いつきたい。線を飛び越えたい。
それでも、制服の脱ぐのは少し寂しい。大人になりたいと思いながら、心の一部では、まだ子供でいたいと感じているのかもしれない。
あかりは繋がれた手にそっと視線を向けた。
小さかった手が、今はもうあかりを包み込むほどに大きい。
伸びた背はあかりよりも高く、低くなった声は耳に心地良く響く。
同じように手をつないでいても、心に浮かぶのはまったく違う感情だ。
あの頃はただただ楽しくて、幸せだった。
『あかり! 置いてくぞ!』
今よりもずっと高い声のヒカルがあかりを引っ張って歩いた。
今でも鮮明に思い出せる。そのくらい長い時間、二人で遊んでいたのだ。
ふとした瞬間に、あかりを呼んで手招きする少年の姿が思い出されるほどに。
もし、ヒカルが当時のままだったなら、こんな風に並んで歩いてはくれなかっただろう。一人で先に走っていった後、掛け戻ってあかりの手を無理やり引っ張ったに違いない。痛いと叫んでも、離してくれなかっただろう。
「もう、昔のヒカルはいないのにね……」
自分の想像におかしくなって、クスクス笑うと、ヒカルが怪訝そうな表情を浮かべた。
「なんでもない!」
あかりが言うと、ヒカルは首をかしげながらも、気にせず歩いた。
グッと引っ張る暖かく力強い手の感触に、当時は感じなかった愛おしさを覚えると、脳裏に浮かんだ小さなヒカルがバイバイと手をふったような気がした。
呼びかけられた声に振り向くと、地方出張の帰りだろうか、珍しくスーツ姿のヒカルが立っていた。
「ヒカル! 仕事帰り?」
嬉しくなって頬を緩めると、ヒカルは軽く笑って頷いた。
「ああ。あかりは? 学校終わったのか?」
あかりの全身をさっと見下ろし、首をかしげながら言った。
高校の制服を来ているにもかかわらず、今は昼の二時、下校には早過ぎる時間だ。疑問に思うのは当然だろう。
「うん。もう三年生だし、今日は進路指導だけで終了!」
三年間来た制服とも、もうすぐお別れだ。
長いようで短かった三年間。
少しの寂しさと、少しの期待感がある。
制服を脱いだなら、隣に歩く幼なじみに少しは追いつけるだろうか?
ヒカルは中学を卒業してから、あっという間に大人になってしまった気がする。当たり前にスーツを来て、大人の人たちの中で、対等に立っている。
そんなヒカルと比べて、制服を着ている自分が、いつまでも子供のような気がして、早く大人になりたいと思っていた。
「あーもうそんなになるのかー。中学を卒業したのなんて、ついこないだのような気がしてたのにな」
「ヒカル……お年寄り見たいよ?」
眉間にシワを寄せてそう言うと、ヒカルはちょっとむくれた表情になって、軽く小突く仕草をした。
「うるせー。社会人になるとな、一年なんてあっという間なんだよ」
ヒカルの手があかりの頭に触れる。
ポンポンと撫ぜて離れようとする手を、あかりはそっと捕まえた。
そのまま手を合わせると、ヒカルのほうからぎゅと握ってくる。
こんな風に自然と手をつなげる関係になったのは、最近の事だ。
ずっとずっと昔はいつだって手をつないで走りまわっていたのに、いつの間にかその手が離れ、気が付けばヒカルはどんどん先を進んでいた。
でもようやく、ようやくこの位置に帰ってくる事ができた。
それでもまだ、対等になれたとは思えない。学生の自分と社会人のヒカルの間には、超えられない一線があるような気がする。
ただの気後れに過ぎないのかもしれないけれど、今は少しでも早く、この幼なじみに追いつきたい。線を飛び越えたい。
それでも、制服の脱ぐのは少し寂しい。大人になりたいと思いながら、心の一部では、まだ子供でいたいと感じているのかもしれない。
あかりは繋がれた手にそっと視線を向けた。
小さかった手が、今はもうあかりを包み込むほどに大きい。
伸びた背はあかりよりも高く、低くなった声は耳に心地良く響く。
同じように手をつないでいても、心に浮かぶのはまったく違う感情だ。
あの頃はただただ楽しくて、幸せだった。
『あかり! 置いてくぞ!』
今よりもずっと高い声のヒカルがあかりを引っ張って歩いた。
今でも鮮明に思い出せる。そのくらい長い時間、二人で遊んでいたのだ。
ふとした瞬間に、あかりを呼んで手招きする少年の姿が思い出されるほどに。
もし、ヒカルが当時のままだったなら、こんな風に並んで歩いてはくれなかっただろう。一人で先に走っていった後、掛け戻ってあかりの手を無理やり引っ張ったに違いない。痛いと叫んでも、離してくれなかっただろう。
「もう、昔のヒカルはいないのにね……」
自分の想像におかしくなって、クスクス笑うと、ヒカルが怪訝そうな表情を浮かべた。
「なんでもない!」
あかりが言うと、ヒカルは首をかしげながらも、気にせず歩いた。
グッと引っ張る暖かく力強い手の感触に、当時は感じなかった愛おしさを覚えると、脳裏に浮かんだ小さなヒカルがバイバイと手をふったような気がした。
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